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2009年09月16日

連続小説 12) 依頼完了

自称ウェンツ君
連続小説 12) 依頼完了

キムタク20
連続小説 12) 依頼完了
20%位なら似てると言われてw

あくまでも執事どす。
連続小説 12) 依頼完了
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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』

12) 依頼完了
 黙り込む老伯爵にエディが問いかける。
「だからどうしたんです? 判るように言って貰えませんか」
「お主、まずいことになったかもしれんぞ」
「まずいこと? どういうことです?」
「さきほどアイリクに同情というか哀れみというかそういう念を送ったじゃろ」
 身に覚えのないことを言われて慌てて否定する。
「え? いや別に念なんか送った覚えはありませんよ。可哀想だな、とは思いましたけど」
「力になってやろうかとも、思ったじゃろ?」
「まあ少しはそうですね。大変そうな女性を見ると力を貸すのは男として当然でしょ」
「それがいかんかったな」
「え?」
「アイリクはこの六百年頼りにされるだけで、助けてやろうという念を送られたことがなかったんじゃよ。そこへお主が力を貸してやろうと念じた」
「別にそんな深い考えがあった訳じゃないんですが……」
「その分邪心というかスケベ心も無かったじゃろ」
「そりゃ人形の中で六百年生きてる霊に対してスケベ心はいだかんでしょ」
「ばかもん。そういう意味じゃないわい。見返りを求めるとかそういう気持ちは無かったという話じゃ」
「親切に見返りを求めちゃいけないと、お袋に教わりましたからね」
「いいお袋さんじゃな。今度紹介してくれ」
「そんな無茶な……。」
「話し合いは終わったようじゃな」
 先ほどまで石像のように固まっていた少佐が動き出し、二人の方にやってくる。
「少佐大丈夫ですか? どうなりました?」
「うむ」
 どう説明した物か考えている少佐。
「伯爵が俺がどうとか言ってるんですが、何か関係するんですか?」
「そうか、伯爵に聞いていたか。それなら話は早いな」
「というと?」
「お前、お年寄りが道で倒れていたらどうする?」
「そりゃ助け起こしますよ」
「そのご夫人が足をくじいていたら?」
「うーん、肩を貸すか背中におぶってそのへんのベンチまで運んであげるか。車で自宅まで届けてあげるかですかね。いったいどうしたんです?」
「なるほど。見込まれるわけだな」
「見込まれるって?」
「アイリク様がお前に頼みがあるそうだ」
「頼みってなんですか?」
「その柱の下に行って座っていてくれ」
「座るんですか。それで?」
「お前の膝枕で少し休みたいとの事だ」
「俺の膝枕? なんでまた?」
「お前の力を分けて欲しいそうだ。頼みをきくのか断るのかどうする?」
「そりゃ別に構いませんけど、なんだか急だなあ。この辺でいいんですか?」
 エディが柱にもたれて座っていると腿のあたりにぼーっとした光が現れる。しばらくすると人型を取り始める。
「ばあちゃん!」
 エディの膝に年老いた祖母の姿が現れエディににっこり微笑む。
(家は商売をしていたから親父もお袋も忙しくて、子供達の面倒はもっぱらばあちゃんが見てくれていた。我が儘やいたずらでずいぶん困らせたと思うけど、いつもにこにこしていたっけ。ああそうか、こんなに小さかったんだ。髪も真っ白だったし目も良く見えてなかったんだよな)
 エディ、祖母の頭をなでながら自分も眠ってしまう。
遠くから声が聞こえる「エディー……」
「うーん、もう少し寝かせてくれよ」
「エディ、置いていくぞ」
「……」
 エディ、目を覚ます。
「ばあちゃんじゃなかった、アイリク様は?」
「満足して戻られた。お前に感謝していたぞ」
「わしからも礼を言わせて貰うぞ。あれも久しぶりに休むことが出来て本当に良かった」
「おかげで伯爵に回せるエネルギーも確保できたそうだ。これで夫人も満足してくださるだろう」
「そうだ、夫人はどうなりました?」
「残念だがまだ目を覚まされない。おそらく身を守るために自分で殻を作って閉じこもってしまわれたのだろうな」
「おこすことは出来ないんですか?」
「無理に殻を破ると精神崩壊の危険がある。すまんがお前がおぶってくれるか」
「ええ、判りました」

 エディが夫人を背負い、少佐がアイリクを抱えている。
「伯爵、お世話になりました」
「いやいや、こっちこそ世話になった。なにかあったらまた来いよ」
「それは難しいかもしれませんね。なんせ伯爵家の霊廟ですからおいそれとは近づけませんよ」
「そうか残念じゃの。それなら護符を使ってこちらからお邪魔するか」
「うへ、ほどほどにお願いしますね」
「では、お別れじゃ。そこの転送機を使えば燭台の部屋まで行けるでの」
 夫人を背負ったエディと、アイリクを抱えた少佐が床の円形部分に乗ると同時に姿がかき消える。

 最初の部屋。外へ伸びる通路が見える。突然三人とアイリクが現れる。
「お、これは……。少佐、入り口が見えますよ。便利なもんだな。最初からこれで飛ばしてくれればいいのに」
「エディ、体の具合はどうだ?」
「具合? 眠ったせいか頭がスッキリしてますが。何か?」
「妙にだるいとか、体が重いとかは?」
 エディ、夫人を背負ったままその辺を歩き回る。
「特に変わった点は無いように思います」
「そうか。ならいい。さて外へ出るか」
「ええ。行きましょう」

 入り口に戻ると大きな歓声があがる。
 医療スタッフが夫人を抱きかかえ検査に取りかかる。
 ソフィアは夫人の側に駆け寄り話しかけているが、夫人の意識は戻らないようだ。
 しばらくしてソフィアが二人の側にやってくる。
「少佐そしてエディさん、お礼が遅れて申し訳ありません。ありがとうございます。感謝いたします」
 少佐、ソフィアにアイリクを渡す。ソフィア、アイリクをしっかり抱きしめる。
「いえ、夫人のお体を心配なさるのは当然です。夫人の容態にも関連するのですが、霊廟内部で起こったことを説明させていただきたいのです。どこか部屋を用意していただけませんか」
「判りました。応接室にまいりましょう」

 広くて豪華な調度品で埋め尽くされた部屋。ソファーにソフィア、少佐、エディが座っている。ベルモントはソフィアが座っているソファーの脇に立っている。
 少佐がアイリクを抱えているソフィアに向かって手振りを交えて語っている。
「およそ、こんなところです」
 ソフィア、深々と頭を下げる。
「人形の捜索をお願いしたお二人に伯爵家の危機まで救っていただき、なんとお礼を申し上げていいのかわかりません」
「ソフィア様、顔をお上げ下さい。我々は務めを果たしたまでです。それより今後のことですが」
「はい」
「夫人の治療と伯爵の警護について早急に手を打った方がよろしいと思われます」
「少佐に考えがおありですか?」
「夫人はアイリク様の拒絶によるショックから、自らの魂に障壁を作られたと思われます。通常の治療でこれを解決するのはおそらく無理です。伯爵家に仕える魔導の者をお呼びになり、アイリク様のお力を借りることに成功し事態が収束に向かっていることをソフィア様からお伝え下さい」
「わかりました」
「伯爵の警護についてはどのような警護をお望みか伯爵、ベルモント氏で話し合われた結果をアイリク様にお伝え下さい。初代伯爵が提示された方法をベースにされるとよろしいと思います」
「承知いたしました」
「では我々はこれで失礼します。またご用が有ればいつでもどうぞ。ただし次回からは私の事務所に直接お願いします。それでは」
 少佐、立ち上がり部屋を出ようとするが急に振り返る。
「忘れていました。お預けしたカラスをお願いできますか」
「あら、そうでした。今連れて参りますね」
 ソフィア、小走りに部屋に戻ろうとする。
「いえ、それなら私がお部屋にお伺いします」
「では、ご一緒に」
 女性二人が出て行くのを見送るベルモントとエディ。
「ゴホン。ではわたくしは旦那様にご報告を」
「あ、じゃあ俺は玄関で待ってますね」

 ドールハウスにアイリクを置きほっとするソフィア。
 カラスををじっと見つめる少佐。
「具合はどうですか?」
「はい。すっかり良くなったようです。お手数をおかけしました」
 にっこり微笑むソフィア。
「アイリク様も元の場所に戻られて安心されたようですね」
「本当に助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ。……、ソフィア様。良ければお聞きしたいことがあるのですが」
「なんでしょうか?」
「ソフィア様はその……生命エネルギーについてはご存じですか?」
「アイリクが私から受け取っているというエネルギーの事でしょうか?」
「ご存じだったのですね」
 この部分は話して良いものかどうか判断がつかなかったので、先ほどの説明でもあえて触れなかったのだが、余計な心配だったようだ。
「ええ。お爺さまが生きていらした頃、話して下さいました。嫌なら止めても良いのだぞと」
「そうですか。それでソフィア様は何と?」
「そのままで構わないと答えました。別段不便を感じませんでしたし、それでご先祖様のお役に立てるのなら。それに私これまで病気になったことが無いんです。きっとアイリクが守ってくれてるんだと思います」
 にこやかに答えるソフィアに少佐の表情も和らぐ。
「そうですね。判りました。それではこれで失礼します。機会が有ればまたお会いしましょう」
「ええ。是非」
 微笑み合う二人。

 ぽつぽつと小雨が降り出す中、エディが運転する車は桜並木の中を静かに走っている。助手席の少佐は気が抜けたようにぼんやりと外の景色を眺めていた。濡れた桜の葉が新緑をいっそう濃くして花びらとのコントラストが鮮やかだ。
「なんだかすごい時間がかかったような気がしてましたが、まだ半日程度しか経ってなかったんですね」
「そうだな」
 視線を外に向けたまま少佐が答える。
「まあこれで10万ドルなら、あっ!」
「どうした?」
「追加料金貰うの忘れてますよ。まいったな、今から戻ったらかっこ悪いですよね?」
 少佐が普段の調子を取り戻したように、にやっと笑い答える。
「こういう時は相手から言ってくるのを待つもんだ」
「そうなんですか?」
「その方が金額が大きくなる」
「へーそういうもんですかね。普段は1ドルでも値切ろうって奴らばかり相手にしてるんで勝手が違いますね」
「期待して待ってていいと思うぞ。なにせ相手は伯爵家だからな。そうだ、取りあえず残金の4万ドルを渡しておこう」
 カバンから紙幣を取り出しエディに渡す。
「こんな大金持ち歩いてたんですか? ありがたく頂戴します。さーて、何に使おうかな」
「ギャンブルは止めておくんだな。才能があるようには思えん」
「耳が痛いな。家賃の前払いでもして大家を驚かせるかな」
「ギャンブルと家賃しか使い道がないのか?」
「いやそんなことありませんけど……、じっくり考えてみますよ。それはそうとソフィア様と何を話されたんです?」
「うん?」
「二人きりになるために応接室で説明を済ませたんでしょ?」
「なかなか鋭いな。ギャンブルに有効利用できそうなもんだが」
「ちゃかさないでくださいよ。まあ、喋りたくないならいいですけど」
「大した事じゃない。ベルモント氏に聞かれると睨まれる恐れがあったんでな」
「と言うと?」
「生命エネルギーをアイリク様に抜かれていることを知っているか聞いただけだ」
「なんて言ってました?」
「お爺さまから聞かされていたそうだ。その上で続けるかどうかもな」
「なるほど。子供といえど意思を無視してたわけじゃ無いんですね」
「そうだな。そういうやり方もあったんだな」
 少佐、カラスの背中をなでる。
「別な方法に心当たりでも?」
「そう言う訳じゃないが。ふー、疲れた少し眠る。着いたら起こしてくれ」
「判りました」
 少佐はすぐに小さな寝息を立て始める。肩のカラスも目をつぶって眠っているように見える。

 少佐が奥のデスクに座って書類を見ている。エディがドアをノックして入ってくる。
「こんちは。やー、ここはエアコンが効いてていいですね。斡旋所は蒸し暑くて、みんなひーひー言ってますよ」
「なんならお前もこの辺に事務所を開いたらどうだ」
「あはは、無理無理先立つものがありませんて」
「そうでもないんじゃないか、伯爵家から残金が届いたぞ」
「それそれ。で、いくらでした?」
「向こうは言い値を支払うと言ってきたんだがな。ここで欲張ると今後の仕事に関わるんで安めにしておいた」
「もったいないなー。そういう時は20万ドルくらいふっかけて10万で手をうつとか。まあソフィア様から既に10万受け取ってますし、あんまりふんだくるのは気が引けますけどね」
「私はお前に金を渡すのが気が引けるよ。ほらお前の取り分だ」
 少佐、薄い封筒を放る。 エディ、受け取って中を見る。
「はいどうも。うん? 随分薄いな。少佐。なんか間違ってません?」
「間違ってなんかいないさ。お前の取り分の50万ドルの小切手だ」
「50万ドル!?」
「この辺の事務所を買い取ってもお釣りが来るだろ」
「そりゃ買えるでしょうけど。いくらなんでも、ぼりすぎじゃないですか?」
「相手は伯爵家だからな、これでも大分まけたつもりなんだが」
「……」
「アパートの家賃前払いでもするか?」
「うーん、アパートごと買い取れそうですけど。困ったなー」
「何が困るんだ?」
「いやこんな大金渡されても使い道が」
「アパートを買い取ってお前が大家になってもいいだろうし、車でもスーツでも買えばいいじゃないか」
「俺が大家ですか? なんだかなー。車も今の所動いてますしね。スーツくらいは買ってもいいかな」
「まあじっくり考えろ。取りあえずは銀行に預けておけよ」
「ああ、そうですね。そうします。まずは銀行に行ってきます」

エディが出て行った室内。
「あの子いいこね」
「そうだな」
「アイリク様が気に入るのも判るわ」
「残念ながら今回大した収穫は無かったが伯爵家との繋がりも出来たし、今後に期待という所だな」
「あの子にも期待できるのかしら?」
「どうかな。アパートの大家になって、スイーパーを引退するかもしれんぞ」
「似合わないわー」
「ま、縁があればまた組むこともあるだろうよ」

 数日後、エディが以前のぼろい車を運転している。服もいつものと変わらない。
(結局金はそっくり実家に送ることにした。店も古ぼけているし立て替えにでも使ってくれと言って。それと、……少しばあちゃんの墓にも回してくれと)
 遠ざかっていく車。そろそろ初夏の日差しがまぶしくなる頃だ。

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 お疲れ様です。長文にお付き合い頂きありがとうございました。
 感想やご意見があれば、是非コメント下さいね(^^


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Posted by Syousa Karas at 06:03│Comments(2)小説
この記事へのコメント
面白かったです^^
この続編又読めたらいいなあ^^v

最初エディーが結構ワイルドな大人なイメージだったけど、途中から、バットマンやスーパーマンと一緒に居るロビンや、ジミー少年のイメージになりました。親しみやすいい感じのスイーパーの見習いイメージに優しいエピソードが加わって、ますます、良いイメージですねw。最初の感じより,今後変わって行くエディーって言うのが好きかな^^v。
Posted by timou at 2009年09月16日 14:05
 実はDingerを舞台にした次回作も書いてたんですが、色々変わっちゃったからなー
かなり修正しないといけないっぽい(^^;

エディは見習いじゃないんだよー!
単純な仕事が得意なだけw
Posted by Syousa KarasSyousa Karas at 2009年09月16日 17:01
 
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