2009年09月14日
連続小説 10) 初代伯爵
ヨシツネさん。二本の刀を振り下ろすアクションがかこいいです(本文とは、以下r)



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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』
10) 初代伯爵
霊廟内にぽっかりと空いた空間。
中央に大きな白い柱があり巨大な空間を上下に貫いている。
エディ、下を覗き込んで叫ぶ。
「少佐~!」
「耳元で叫ぶな」
「え?」
エディの足下に少佐がぶら下がっている。手首から細いロープが伸び壁に張り付いているのが見える。
エディ、手を伸ばして少佐を引っ張り上げる。
「大丈夫ですか?」
「ああ。脚を咬まれたが骨折まではしていないようだ」
「びっくりしましたよ。高いストッキングが役に立ちましたね」
緊張がほぐれたせいで顔がにやけてしまう。
「あいつはどうなりました?」
「途中までは落ちていったんだが、急に消えたように見えたな」
「消えた?」
「管轄外なのかもしれん」
「縄張りみたいな?」
「そうだ。あいつ自身、システムにとってはイレギュラーな存在なんだろう」
「消えてくれてることを祈りますよ。下についたらバッタリってのはごめんです」
少佐が多少脚を引きずりつつも、二人で階段を足早に降りていく。しばらく降りると床が見えてくる。ここも霊廟同様、壁全体が発光しているようだ。
更に降りると、柱の影に女性の服が見えエディが指さす。
「少佐あそこに」
「よし、私から離れないように注意しろ。いくぞ」
少佐が女性に駆け寄り脈を確認する。エディは周囲を確認する。
「犬は見当たりません。この女性が伯爵夫人なんですかね?」
「おそらくそうだろう、他の人物がここに入ったという話は聞いていないし、入る資格を持った者もいないだろうからな」
「では、お前達は資格を持っているのかな?」
突然聞こえた声にエディが腰の銃に手を伸ばす。
「よせ!」
少佐が片手でエディを制す。顔は突然現れた老人を見ている。
「あなたは?」
「わしはここの住人じゃよ。伯爵だ」
「TVで見たお顔とは異なるようだが」
「ん? ああ、今の伯爵というわけではない。そうだな、ざっと六百年ほど前になるかの」
「……。初代伯爵ウェスト・フォルテモード候ですか?」
「ふぉふぉふぉ、良くわしの名を知っておったな。お主護符を持っておるようだが何者じゃ?」
「伯爵令嬢ソフィア様の依頼を受けて、夫人を救出に来たスイーパーです」
「なるほど。ソフィアが寄こしたのか。あれは決断力のある娘だ」
「ええ、いざとなったらこの施設を破壊してでも夫人を救出するよう依頼されています」
「わっはっはっ、さすがわしの子孫じゃ。ところでお主、わしの言うことを素直に信じるのかね?」
(おっと。俺が思ってた疑問を当の本人が質問してくれた。六百年前の伯爵? それじゃ本物のゴーストだ!)
「いささか、魔導についての知識がありますので。この施設とアイリクと呼ばれる人形、そしてドールハウスですね?」
「うむ、そうか魔導の知識がな。それならば話しやすい」
「お話の前に確認したいのですが、夫人の容態は急を要する物ではありませんか?」
「ああ、ちょっと無理をして意識を失っておるだけじゃよ。それも可哀想な娘でな。正直お前達が来てくれて助かった。話が終わったらここから連れ出しておくれ。アイリクも一緒にな」
伯爵が指さす先に柱のくぼみがあり、そこにすっぽりと人形が埋まっている。
「さて、その護符だが実は大したことはない。それ、そこの坊やにも一枚やろう」
伯爵がエディに護符を渡す。
「これは、どうも……」
「お主にも一枚やろう。今持ってる分はソフィアに返してやってくれ」
「もちろんお返しします。しかしいいのですか? 我々部外者がこのような物をいただいても?」
「ああ、構わんよ。大した力はないがまあ、ここまで来てくれた礼だと思ってくれ。他にやる物もないしの」
(なんだかざっくばらんなゴーストだ。本当に元伯爵なのか? うちの爺さんと同じような喋り方だぞ?)
「さーて。かいつまんで話をするとこの施設は全てアイリク、その人形ではなく人間でわしの妻だった女が作った物だ。正直わしには詳しい仕組みとかは判らん。判っておればその娘の力にもなってやれたんだが」
伯爵は夫人を哀れみの目で見つめ、ため息をつく。白い柱を見ながら話し始める。
「この施設は伯爵家を、ひいてはこの国を守るための大事な仕掛けだと言っておった。この石碑には代々の伯爵の魂が眠っておる。そしてその人形を介して伯爵家の跡取りとの間でエネルギー交換をする。そういう仕掛けだそうだ」
「伯爵家の跡取りとですか?」
「うむ。子供、特に赤子というのはエネルギーの塊だそうでな。我々にエネルギーを分け与えても己の成長には支障がないそうだ。しかし、直接やり取りをするとエネルギーの流れが一方通行になり、結果我々が赤子を取り殺すことになるんだそうじゃ。そこでその人形を仲介することでエネルギーの流れを制御する、とこういうわけだ。ここまではいいかの?」
「ええ、お話をお続け下さい。わからない点は後でまとめて質問させていただきます」
「よしよし。跡取りから取り出した生命エネルギーは人形を介してドールハウス、つまりその石碑の上部に貯まり、必要に応じて人形がそれを我々に与える。我々は人形の求めに応じて霊的エネルギーを与え、人形がそれを跡取りに与える。これが基本的なシステムじゃ。新しく跡取りが生まれれば人形はその赤子に引き継がれ、それまで人形にエネルギーを与えていた者には護符が与えられる。護符はまあ簡易的な端末といったところじゃな」
(この柱の天辺にドールハウスがあるって事か? じゃあここはソフィア様のお部屋の真下? 簡易的な端末?)
六百年前の幽霊にしては今風なことを言うなと思い、つい口に出してしまう。
「簡易端末……」
「うむ。お主らもそれを使えば我々を呼び出すことが出来るぞ」
「え、伯爵をお呼びするんですか?」
「あはは、これでも少しは役に立つんじゃぞ。そうじゃな、回りに敵意を持った者がおらぬかとか、部屋に危険な罠が仕込まれていないかとか、スープに毒が混入していないかとか、要するに危険が迫っていないかを事前に察知できるのでそれを回避するのに役立つということじゃな」
「そう聞くとなんだかありがたい物のようですね」
「まあせいぜい有効に使ってくれ」
俺たちの軽口に少佐が割ってはいる。
「伯爵。よろしいですか?」
「なんだね?」
「夫人は何のために人形を持ち出してここにやってきたのかを、教えていただけませんか」
伯爵ため息をつく。
「自分の夫つまり今の伯爵を助けてやって欲しいということじゃった」
「当代の伯爵を助ける為に?」
「うむ。もちろん今の伯爵にもその護符は与えておる。しかしな、今の議会には彼に敵意を持つ者が多いのじゃよ。加えて毒物も複雑化しておっての。ある部屋の空気を吸った者が別の部屋に用意されている水を飲んだり食事をすると毒が活性化し、太陽の光を受けることで毒性が変化すると、こういった具合じゃ。我々としては、その部屋に入るなとかその部屋で飲み食いしてはいかんとかの注意は出来るが、他の者達が平然と話をしたり食事を取っている中、伯爵だけが避けているようでは臆病者のそしりを免れん。毒と知りつつその中で生活を続けているうちに次第に伯爵の体は蝕まれておるのじゃよ」
「何とかならないのですか?」
「そう言ってその娘もここにやって来たわけだが。一つには伯爵の回りの空気を全て正常化するような障壁を作る。二つには伯爵の体に解毒機能を付与する。三つ目としてドールハウスに蓄えている生命力を伯爵に注入する。などが考えられるわけだが……」
「何か問題でも?」
「我々には意識はあっても現世に影響を与えることはできんということだ。それができるのはその人形に封じられているアイリクの魂だけじゃ」
「アイリク様の魂が人形に?」
「ああ、言ってなかったかの。我々同様アイリクもその魂を現世に残したのじゃよ。その人形にな」
全員の目がアイリクを見つめる。
「この人形に」
「ああ、そう伝えたところ人形を持って再びここにあらわれたのじゃ」
「それで人形をソフィア様の部屋から持ち出したのですね」
「そう言うことじゃの。その場所にセットしアイリクの魂を呼び出したまでは良かったのじゃが。度重ねた交渉もとうとう決裂、アイリクから厳しい拒絶をくらって気絶したというわけだ。女は女に厳しいからのう」
「……。私がアイリク様と話をすることは出来ますか?」
「お主がか? 人形に封ぜられた魂を呼び出す術を知っておるのか?」
「多少の心得はあります。アイリク様の方法とは異なるかもしれませんが」
「ふーむ、それならやってみる価値はあるかもしれんが、そこの坊やが二人の女性を担ぎ出す羽目になるかもしれんぞ?」
エディ、ごくっとつばを飲み込む。
「俺なら大丈夫です。体力には自信がありますから、無事連れ出して見せます」
「その時はよろしく頼む」
「ふむふむ、良い心がけじゃ。男はそうでなくてはの。それでお主アイリクを呼び出してなんとする? その娘に説得できなかったものを、お主が説得するというのか?」
「当事者でないが故に妥協点を見つけやすいということがあります。それと、個人的にアイリク様にお聞きしたいこともありまして……」
「ふむ、まあよかろう。やってみるがよい。そこの坊や、もちっとこっちに来んと女同士の争いに巻き込まれるぞ」
エディ、あわてて伯爵の近くに避難する。
少佐がアイリクの前にひざまづき呪文を唱える。わずかに人形が光っている。少佐までもが人形になったかのように固まったきり微動だにしない。



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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』
10) 初代伯爵
霊廟内にぽっかりと空いた空間。
中央に大きな白い柱があり巨大な空間を上下に貫いている。
エディ、下を覗き込んで叫ぶ。
「少佐~!」
「耳元で叫ぶな」
「え?」
エディの足下に少佐がぶら下がっている。手首から細いロープが伸び壁に張り付いているのが見える。
エディ、手を伸ばして少佐を引っ張り上げる。
「大丈夫ですか?」
「ああ。脚を咬まれたが骨折まではしていないようだ」
「びっくりしましたよ。高いストッキングが役に立ちましたね」
緊張がほぐれたせいで顔がにやけてしまう。
「あいつはどうなりました?」
「途中までは落ちていったんだが、急に消えたように見えたな」
「消えた?」
「管轄外なのかもしれん」
「縄張りみたいな?」
「そうだ。あいつ自身、システムにとってはイレギュラーな存在なんだろう」
「消えてくれてることを祈りますよ。下についたらバッタリってのはごめんです」
少佐が多少脚を引きずりつつも、二人で階段を足早に降りていく。しばらく降りると床が見えてくる。ここも霊廟同様、壁全体が発光しているようだ。
更に降りると、柱の影に女性の服が見えエディが指さす。
「少佐あそこに」
「よし、私から離れないように注意しろ。いくぞ」
少佐が女性に駆け寄り脈を確認する。エディは周囲を確認する。
「犬は見当たりません。この女性が伯爵夫人なんですかね?」
「おそらくそうだろう、他の人物がここに入ったという話は聞いていないし、入る資格を持った者もいないだろうからな」
「では、お前達は資格を持っているのかな?」
突然聞こえた声にエディが腰の銃に手を伸ばす。
「よせ!」
少佐が片手でエディを制す。顔は突然現れた老人を見ている。
「あなたは?」
「わしはここの住人じゃよ。伯爵だ」
「TVで見たお顔とは異なるようだが」
「ん? ああ、今の伯爵というわけではない。そうだな、ざっと六百年ほど前になるかの」
「……。初代伯爵ウェスト・フォルテモード候ですか?」
「ふぉふぉふぉ、良くわしの名を知っておったな。お主護符を持っておるようだが何者じゃ?」
「伯爵令嬢ソフィア様の依頼を受けて、夫人を救出に来たスイーパーです」
「なるほど。ソフィアが寄こしたのか。あれは決断力のある娘だ」
「ええ、いざとなったらこの施設を破壊してでも夫人を救出するよう依頼されています」
「わっはっはっ、さすがわしの子孫じゃ。ところでお主、わしの言うことを素直に信じるのかね?」
(おっと。俺が思ってた疑問を当の本人が質問してくれた。六百年前の伯爵? それじゃ本物のゴーストだ!)
「いささか、魔導についての知識がありますので。この施設とアイリクと呼ばれる人形、そしてドールハウスですね?」
「うむ、そうか魔導の知識がな。それならば話しやすい」
「お話の前に確認したいのですが、夫人の容態は急を要する物ではありませんか?」
「ああ、ちょっと無理をして意識を失っておるだけじゃよ。それも可哀想な娘でな。正直お前達が来てくれて助かった。話が終わったらここから連れ出しておくれ。アイリクも一緒にな」
伯爵が指さす先に柱のくぼみがあり、そこにすっぽりと人形が埋まっている。
「さて、その護符だが実は大したことはない。それ、そこの坊やにも一枚やろう」
伯爵がエディに護符を渡す。
「これは、どうも……」
「お主にも一枚やろう。今持ってる分はソフィアに返してやってくれ」
「もちろんお返しします。しかしいいのですか? 我々部外者がこのような物をいただいても?」
「ああ、構わんよ。大した力はないがまあ、ここまで来てくれた礼だと思ってくれ。他にやる物もないしの」
(なんだかざっくばらんなゴーストだ。本当に元伯爵なのか? うちの爺さんと同じような喋り方だぞ?)
「さーて。かいつまんで話をするとこの施設は全てアイリク、その人形ではなく人間でわしの妻だった女が作った物だ。正直わしには詳しい仕組みとかは判らん。判っておればその娘の力にもなってやれたんだが」
伯爵は夫人を哀れみの目で見つめ、ため息をつく。白い柱を見ながら話し始める。
「この施設は伯爵家を、ひいてはこの国を守るための大事な仕掛けだと言っておった。この石碑には代々の伯爵の魂が眠っておる。そしてその人形を介して伯爵家の跡取りとの間でエネルギー交換をする。そういう仕掛けだそうだ」
「伯爵家の跡取りとですか?」
「うむ。子供、特に赤子というのはエネルギーの塊だそうでな。我々にエネルギーを分け与えても己の成長には支障がないそうだ。しかし、直接やり取りをするとエネルギーの流れが一方通行になり、結果我々が赤子を取り殺すことになるんだそうじゃ。そこでその人形を仲介することでエネルギーの流れを制御する、とこういうわけだ。ここまではいいかの?」
「ええ、お話をお続け下さい。わからない点は後でまとめて質問させていただきます」
「よしよし。跡取りから取り出した生命エネルギーは人形を介してドールハウス、つまりその石碑の上部に貯まり、必要に応じて人形がそれを我々に与える。我々は人形の求めに応じて霊的エネルギーを与え、人形がそれを跡取りに与える。これが基本的なシステムじゃ。新しく跡取りが生まれれば人形はその赤子に引き継がれ、それまで人形にエネルギーを与えていた者には護符が与えられる。護符はまあ簡易的な端末といったところじゃな」
(この柱の天辺にドールハウスがあるって事か? じゃあここはソフィア様のお部屋の真下? 簡易的な端末?)
六百年前の幽霊にしては今風なことを言うなと思い、つい口に出してしまう。
「簡易端末……」
「うむ。お主らもそれを使えば我々を呼び出すことが出来るぞ」
「え、伯爵をお呼びするんですか?」
「あはは、これでも少しは役に立つんじゃぞ。そうじゃな、回りに敵意を持った者がおらぬかとか、部屋に危険な罠が仕込まれていないかとか、スープに毒が混入していないかとか、要するに危険が迫っていないかを事前に察知できるのでそれを回避するのに役立つということじゃな」
「そう聞くとなんだかありがたい物のようですね」
「まあせいぜい有効に使ってくれ」
俺たちの軽口に少佐が割ってはいる。
「伯爵。よろしいですか?」
「なんだね?」
「夫人は何のために人形を持ち出してここにやってきたのかを、教えていただけませんか」
伯爵ため息をつく。
「自分の夫つまり今の伯爵を助けてやって欲しいということじゃった」
「当代の伯爵を助ける為に?」
「うむ。もちろん今の伯爵にもその護符は与えておる。しかしな、今の議会には彼に敵意を持つ者が多いのじゃよ。加えて毒物も複雑化しておっての。ある部屋の空気を吸った者が別の部屋に用意されている水を飲んだり食事をすると毒が活性化し、太陽の光を受けることで毒性が変化すると、こういった具合じゃ。我々としては、その部屋に入るなとかその部屋で飲み食いしてはいかんとかの注意は出来るが、他の者達が平然と話をしたり食事を取っている中、伯爵だけが避けているようでは臆病者のそしりを免れん。毒と知りつつその中で生活を続けているうちに次第に伯爵の体は蝕まれておるのじゃよ」
「何とかならないのですか?」
「そう言ってその娘もここにやって来たわけだが。一つには伯爵の回りの空気を全て正常化するような障壁を作る。二つには伯爵の体に解毒機能を付与する。三つ目としてドールハウスに蓄えている生命力を伯爵に注入する。などが考えられるわけだが……」
「何か問題でも?」
「我々には意識はあっても現世に影響を与えることはできんということだ。それができるのはその人形に封じられているアイリクの魂だけじゃ」
「アイリク様の魂が人形に?」
「ああ、言ってなかったかの。我々同様アイリクもその魂を現世に残したのじゃよ。その人形にな」
全員の目がアイリクを見つめる。
「この人形に」
「ああ、そう伝えたところ人形を持って再びここにあらわれたのじゃ」
「それで人形をソフィア様の部屋から持ち出したのですね」
「そう言うことじゃの。その場所にセットしアイリクの魂を呼び出したまでは良かったのじゃが。度重ねた交渉もとうとう決裂、アイリクから厳しい拒絶をくらって気絶したというわけだ。女は女に厳しいからのう」
「……。私がアイリク様と話をすることは出来ますか?」
「お主がか? 人形に封ぜられた魂を呼び出す術を知っておるのか?」
「多少の心得はあります。アイリク様の方法とは異なるかもしれませんが」
「ふーむ、それならやってみる価値はあるかもしれんが、そこの坊やが二人の女性を担ぎ出す羽目になるかもしれんぞ?」
エディ、ごくっとつばを飲み込む。
「俺なら大丈夫です。体力には自信がありますから、無事連れ出して見せます」
「その時はよろしく頼む」
「ふむふむ、良い心がけじゃ。男はそうでなくてはの。それでお主アイリクを呼び出してなんとする? その娘に説得できなかったものを、お主が説得するというのか?」
「当事者でないが故に妥協点を見つけやすいということがあります。それと、個人的にアイリク様にお聞きしたいこともありまして……」
「ふむ、まあよかろう。やってみるがよい。そこの坊や、もちっとこっちに来んと女同士の争いに巻き込まれるぞ」
エディ、あわてて伯爵の近くに避難する。
少佐がアイリクの前にひざまづき呪文を唱える。わずかに人形が光っている。少佐までもが人形になったかのように固まったきり微動だにしない。
Posted by Syousa Karas at 06:03│Comments(0)
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