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2009年09月11日

連続小説 7) 伯爵家

今回も長いよ! 分けた方が良かったかな?

ベルモント氏のイメージは天野喜孝さんが描いた渋いおじさんなんですが、どこで見たのか忘れてしまいました(><
代わりにDさんをw
連続小説 7) 伯爵家

天野喜孝さんはグインサーガ、吸血鬼ハンターD、ファイナルファンタジー等のキャラデザインをされている方です。
ご本人のHPギャラリーでこれまでの作品の一部を見ることが出来ます。
http://www.so-net.ne.jp/amano/gallery/index.html
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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』

7) 伯爵家
 翌日、早朝の少佐の事務所。
「おはようございます。あれ少佐まだ着替えてないんですか?」
「着替えとはなんだ? それよりお前その格好どうしたんだ?」
「え、やだなー伯爵家に行くからにはそれなりの格好をと思って。少佐は普段着で行くんですか?」
 きっちりとスーツを着込んだエディを見て少佐があきれ顔で答える。
「あのなあ。別にパーティに紛れ込む訳じゃないんだぞ。動きやすい服でないと何があるか判らんだろ」
「何かって、今回は荒事は無しじゃ?」
「相手次第だな。昨日のガード連中が向かってきたらそうも言ってられんだろう」
「まいったな。これ一張羅なんですよ。汚したくないのに」
「まあいい。そうなったら新しい服が買えるくらいの料金は追加して貰えるだろうよ」
「お、それもいいですね。この服もそろそろ買い換え時だとは思ってたんですよ」

 市街地を見下ろす丘の上の広い道路をエディが口笛を吹きながら運転している。
「ガキの頃、ここには何があるんだろうかと疑問でしたよ。なんせ町中どこにいても見えますからね。もっとも、そのうち存在自体が気にならなくなりましたけど」
「庶民には関わりのない場所だからな」
「ええ、もうバリバリの庶民ですから。なんだか気持ちの良い場所ですね。道路も広いし街路樹も立派だ。これなんて木ですか?」
「桜だな。これは桜門に通じる道だから、屋敷まで桜並木が続いているはずだ」
「桜ねー、綺麗なもんですね。他にも入り口があるんです?」
「門の数は八つと聞いている。他に隠し門もあるんだろうがな」
「八つに隠し門ですか。庶民には関わりない話ですね」
 車の周囲を薄いピンク色の桜の花びらが舞う。
「なんだか穏やかな気持ちになりますね。浮き世を忘れるというか」
「ずいぶん気に入ったようだな」
「普段、花なんて見ませんからね。いや、アパートの前になんか咲いてたような気も? もちろん、こんな立派なもんじゃありませんけど」
「気をつけろよ。ぶつけでもしたら、今回の仕事料が吹っ飛ぶぞ」
「うへ、やばいやばい」
 しばらく黙って運転していたが、うっすらと眠気が襲ってくる。何か話でもしていないと仕事料をふいにしてしまいそうだ。
「ところでちょっと聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「少佐、以前はカラスって呼ばれてましたよね? なんでまた少佐と呼ばれるようになったんです? あ、言いたくなければ別にいいんですけど」
 少佐の方を見ると黙って桜を見つめている。まずいことを聞いたかなと後悔しだした頃ふいに喋り始めた。
「ある仕事で大人数同士の撃ち合いになってな。相手方の中に以前私の部下だった者がいたんだ。そいつは私を見つけると思わず飛び出して少佐と叫んだ」
「それは、よっぽど懐かしかったんでしょうね」
「そうだな。しかし撃ち合いの最中に飛び出したんじゃ格好の的だ。敵から見れば降伏するように見えたのかもしれん」
「それじゃあ……」
「ああ。どちら側の弾かはしらんがその場で撃たれた」
 エディ、気まずそうな顔をする。
「それは……」
「で、どう話が伝わったのか知らんが私がそいつを撃った事になってな。私を少佐と呼ぶと撃ち殺されるという噂が広まって今に至るわけだ」
「え、じゃあカラスと呼んだ方がいいですか? 俺そんな話知らなくて」
「構わんよ別に。少佐と呼ばれるようになってからの方が仕事も増えたし、このカラスに手を出すやつもいなくなった」
 そう言うと肩に乗っているカラスの羽をやさしく撫でた。
「そういえば、そのカラスいつも一緒ですね。よっぽど気に入ってるんですね」
「そうだな、生まれたときから一緒だからな」
「えー卵から育てたんですか? 通りで慣れてるはずだ。少佐のこと母親だと思ってるのかもしれませんね」
「母親か。ふふふ」
 ゆっくりとしたカーブを曲がると立派な構えの門が見えてきた。
「あれが桜門ですか」
「そうだ。運転は慎重にな。スピードを上げたりするなよ」
エディ「へいへい」

 門の手前で車を停める。門の内と外に守衛がいて一人が近づいてくる。
「今日は敷地内への立ち入りは禁止だ。直ぐに引き返せ」
 横柄な守衛に少佐が答える。
「ソフィア様の依頼でやってきたスイーパーだ。ベルモント氏に確認して貰えば判るはずだ」
「ソフィア様の……。しばらくお待ち下さい、確認してきます」
 小走りで去っていく守衛を見て昨日の少佐の言葉を思い出す。
「ずいぶんな効き目ですね。ソフィア様の名前は」
「そりゃそうだろ。なんせ命がけで守るべき相手だからな」
「誰も逆らえないって訳ですか。こりゃソフィア様の陰謀説も……」
「おいおい、ご本人の前でそれらしい態度を取るなよ。生きて屋敷を出られなくなるぞ」
「了解です。命は惜しいですからね」
 先ほどの守衛が急いで戻ってくる。
「どうぞ、お通り下さい。ただし車は守衛所脇の駐車場に止めて頂きます」
 守衛が戻り門が開く。駐車場に車を止め建物に向かって歩き出す。
「ずいぶん警戒してますね。何かあったのかな? ああそうか、人形が盗まれたからでしょうか?」
「どうだろうな、それだけじゃないような雰囲気だが」

 豪華で大きな建物が見えてくる。執事がドアを開け二人を招き入れる。
 程なくベルモントが慌てた様子で現れた。ただならぬ様子を見て少佐が問いかける。
「どうしたのですか? ずいぶん慌ただしいご様子ですが」
「実は緊急事態がおきまして。奥様が行方不明になられたのです」
 予想外の展開につい口を挟んでしまう。
「行方不明? ゴーストじゃなかったフェアリーモードで探せばいいんじゃ?」
「その、居所は判っていると言えば判っているのですが……」
 いいよどむベルモント。
「屋敷の者達には入れない場所があるのです」
 声とともに奥からソフィア様が現れる。少佐と二人深々と礼をする。
「ソフィア様。お早うございます」
「お早うございます少佐。エディさん」
「入れないとは、契約印のことですか?」
「ええ、そうです。彼らはそれを破って立ち入ることは出来ません。そんなことをすれば」
「死んでしまうと?」
 言いよどむソフィアに変わりベルモントが答える。
「いきなり死ぬわけではございませんが、さほど進まぬうちに行動不能になり放置すれば死ぬことになるでしょう」
「では、誰も助けに行けないのですか?」
「私なら入っていけるのですが」
 ソフィアの言葉にあわててベルモントが割ってはいる。
「とんでもございません。救助の者も向かえないような場所にお嬢様を行かせるわけには参りません」
 何か言いたそうなソフィアを制するように、少佐がベルモントに問いただす。
「では、夫人の救出はどうなさるおつもりです?」
「手が無いわけではないのですが……」
 それまで黙って聞いていた俺も、的を射ないやりとりについ口を出してしまう。
「手が無いわけではないなんて、悠長な事言ってないで、手が有るんならさっさとやればいいじゃないですか」
「契約印を結んでいない者ならば入っていけるのです。ただ、中は様々な仕掛けがある迷路になっていると聞いておりますので。気力・胆力・行動力に優れた人物でないと……」
 そう言うと、ベルモントはじっと少佐を見つめる。
「判りました。我々が救出に向かいましょう。ただしこれは別料金になりますが、よろしいですか?」
「おお、ありがたい。もちろん十分な謝礼をお支払いいたします」
「では、判る限りの情報をお聞かせ下さい。その場所とはいったい?」
「伯爵家の霊廟です」
「霊廟」
「中にご遺体があるというわけではないのですが、代々の伯爵家の魂が休まれている場所と伺っております」
「魂ですか」
 なぜか少佐の表情が堅くこわばる。
「なぜ夫人は霊廟に向かわれたのです? 日常的にお参りをする習慣でも?」
「いいえ、そのような習慣はございません。伯爵家の方がお亡くなりになった場合や、爵位襲名など限られた場合だけでございます」
「夫人がそこに向かわれた理由に心当たりは?」
 ベルモント、苦しそうな表情になる。
「あるのですね?」
「いいのよベルモント。お母様を捜し出すのに必要なら隠し立てすることはありません」
 言葉を詰まらせながらも話し出すベルモント。
「昨日あなた方とお会いした後、奥様にスイーパーの方が見えられるとお話しいたしましたところ、大変動揺なさったご様子で」
「霊廟に向かわれたと?」
「その時点では考え込んでおられるご様子でした。一人になりたいとおっしゃるので退出いたしましたが、今朝になって行方が判らなくなってしまい」
「どうして霊廟に向かったと判ったのですか?」
「伯爵様にご報告し、フェアリーモードの使用許可をいただきました。監視カメラの映像をチェックいたしましたところ、夫人が霊廟の中にお入りになる姿は確認致しましたが、お出になる映像は確認できておりません」
「つまり、まだ中にいるという事ですね」
「さようでございます」
「出入り口が複数有ると言うことはありませんか?」
「私が存じ上げる限り、その様なものはございません」
「伯爵は他に何か?」
「明日から始まる議会のため戻ることはできないと。全て任せるから何としても見つけ出すようにとのお言葉でした」
「ふむ。伯爵はいつから首都に?」
「……、六日前でございます」
「六日というと、人形が紛失した日ですね」
 黙り込むベルモント。
「フェアリーモードを使ったということは、ソフィア様のお部屋から人形を持ち出した者が誰なのか既に判明しているのですか?」
「いえ、昨日の映像のみを対象にいたしましたので」
「六日前の映像に関してもチェックをお願いできますか?」
「……」
 押し黙るベルモントにソフィアが指示を出す。
「ベルモント、私が許可します。調べてきて頂戴」
「……、承知いたしました」
 去っていくベルモント氏の背中に哀愁のような物がだだよっているように見えたのは気のせいだったろうか。
「ソフィア様、よろしければ人形の有った部屋。つまりソフィア様のお部屋を拝見させていただきたいのですが、お願いできますか?」
「はい、どうぞこちらへ」
 ソフィア様を先頭に屋敷の中を進む。二階建てのアパートがすっぽり入りそうな高い天井。あんなところ、どうやって掃除するんだろうか? こんなホテルに泊まったら一泊で相当取られるんだろうな。などと埒もないことを考えながら歩いていると、突然それまでとは違った古めかしい区画に入る。
 天井も低く、廊下の幅も半分以下だろうか。よく手入れをされているものの壁に浮き出た染みの跡など古くささは否めない。芸術とかにはとんと無縁の俺にも壁に掛かった絵画や所々に置かれた壺などが今時の物とは様子が異なるくらいは判った。
 じろじろと辺りを見回していると、それに気づいたソフィア様が立ち止まり俺に話しかけてきた。
「古くて驚かれたでしょう? このあたりは初代伯爵の時代から残されている物なんですよ」
「初代って、何百年も前のお話じゃ?」
「ええ、そうなりますね。伯爵家の跡取りは代々ここで暮らすのがしきたりになっているんです」
(この国の建国当時から残っている建物と言う事になる。さすが伯爵家という所だろうか。街の教会や議事堂を古いと思っていたが上には上があるもんだ。間違いないのは、何か一つでも壊したら一生ただ働きだって事かな)
「さ、まいりましょう」
 ソフィア様の言葉で再び歩き出す。
 自分の部屋に移動するだけでこんなに歩くとなると、意外に足腰は丈夫になるんじゃないか? などと考えていると再びソフィア様が立ち止まる(やばい。また見抜かれたか!)
「着きました。ここが私の部屋です」


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