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2009年09月13日

連続小説 9) 霊廟

今回も長いぞw
我慢して読んでね。

こないだのB@Rさんのトレハンで頂いた犬AVです。
連続小説 9) 霊廟

こっちはこの間復帰したATLUSさんのケルベロス
連続小説 9) 霊廟

連続小説 9) 霊廟

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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』

9) 霊廟
 霊廟前に行くと周りを屈強な警備員が厳重にガードしていて、少し離れたところで医療スタッフが待機している。
 少佐とエディは車から取ってきたリュックを背負っている。
「では行って参ります。何か伝え忘れた事はありませんか?」
「少佐。関係ないかもしれませんが、これをお持ち下さい」
「これは?」
「アイリクと共に伯爵家に代々伝えられる護符です」
 ベルモント、驚いてソフィアを押しとどめようとする。
「お嬢様、それをお渡しするのはいかがなものかと」
「いいのです、ベルモント。少佐達に何かあればお母様も戻ることが出来ないのですから。全てお任せします。もし……」
「もし?」
「霊廟を破壊する必要があるのなら、破壊してしまって構いません」
「お、お嬢様それは……」
「いかに歴史有る建物とはいえ所詮は物です。人の命には代えられません。責任は私が取ります」
 少佐、しばらく令嬢を見つめ、優しい表情で返事をする。
「判りました。全力を尽くします」

 入り口にビーコンを設置し、携帯ライトと無線を確認して慎重に霊廟内に進入する。
 しばらく進むと小さな部屋に出る。壁には八つの燭台が並んでいる。
「右から二番目でしたね。火を付けますか?」
「私がやろう」
 燭台に火を付けると、あっと言う間もなく少佐の姿が消える。
「少佐? どこです?」
 エディ、辺りを見渡し声をかけるが返事がない。
 辺りを捜索しようとしたとき、無線機から声が聞こえてきた。
「私の声が聞こえるか?」
 すかさずエディが返事をする。
「ええ、聞こえます。どこですか?」
「さあな。ここからはビーコンの位置が確認できない。そっちはどうだ?」
「さっきと同じです。入り口にあるのが見えます」
「ふむ。すると飛ばされたのは私だけと言うことになるな」
「私も燭台に火を灯してみますか?」
「火は消えたのか?」
「いえ、まだついています」
「ではそのまま待機しろ。火が消えたら五分待ってから火を付けろ」
「どうしてまた?」
「私が仕掛けを作るならそうするからだ。側にいたお前が一緒に飛ばなかったと言うことは、敵と一緒であることを考慮しての仕掛けだろう。直ぐに火を消して付け直したりすると敵と判断される恐れがある。火が消えるのを待つんだ、いいな」
「判りました」
「下手に動くなよ。別の仕掛けが動いてしまう可能性があるからな」
「了、了解しました」
 部屋に続く別の通路から獣の声が聞こえて来る。緊張して辺りを見回す。
 しばらくすると燭台の火が消える。
「少佐。今、火が消えました。これから五分待ちます」
「了解。飛んだ先に私の口紅が置いてあったら同じ場所だと思って良いだろう。拾って真っ直ぐ進め」
「く、口紅って例の爆弾ですか?」
「細かい事を気にするな」
(細かい事って言われても……。踏んづけでもしたらどうするんだ)
 時計を見て火を付ける。一瞬回りの景色がぼやける。
 足元に口紅が置いてあるのが見えた。
「少佐、口紅を見つけました。拾って前進します」
「了解」
 口紅をそっとポケットに入れ通路を進む。
 しばらく進むと行き止まりにぶつかる。回りの壁を調べるが何もないようだ。
「少佐、行き止まりです」
「む、そうか。私が先に進んだのがまずかったようだな。よし、戻るから待機しててくれ」
「了解。これはどういう仕掛けなんですかね?」
「多分、フェアリーモードがかけてあるか令嬢から預かった護符を持った者がいないと先に進めないのだろう」
「フェアリーモードってそんな昔からあったんですか?」
「逆だろうな。先に伯爵家の者を識別する仕掛けがあって、後からそれに反応するフェアリーモードが開発されたと考えるべきだな」
「なるほど。それなら俺達もフェアリーモードをかけて貰えば良かったですね」
「ははは、遠慮するよ。そう簡単にかけたり外したり出来るようなら敵方に利用されかねんからな。下手にかけて貰うと一生外れないかもしれんぞ」
「そうか、誘拐されて外されたりしたら追跡できなくなりますもんね。でも、かかったままでも俺たちには都合良いんじゃありません? カメラに写らずに行動できるなら」
「そのまま生きていられたらだろ。ベルモント氏が放置するとは思えん」
「……。そうそう都合良くは行かないってことですね」
「それが人生って奴だな」
 どこかで聞いたような教訓だ。
 すっと壁の中から少佐が現れる。
「お、そこが通れるんですか」
 少佐に口紅を返す。
「おそらく事前に登録された者か、特殊なアイテムを持った者が触るとファントム化するとか、そういう事だろうな」
「ゴーストの次はファントムですか、やれやれ」
「急ぐぞ」
 少し歩くと少佐が立ち止まる。
「ここから十メートルほど進んでもらえるか」
「え? ああ、はい判りました」
「どうだ?」
「怪しげな横道が有りますね。ちょっと見逃してしまいそうな感じの」
「よし戻ってくれ。次に私と一緒にゆっくり進むぞ。ライトを消してな」
 ライトを消し二人並んで進む。
「おや?」
 壁自体がぼんやり発光し道を照らしている。
「これって?」
「どう見える?」
「前方の道が明るく照らし出されていますね。そのせいでさっきの脇道が余計に気づきにくくなってます。怪しいですね」
「この施設の本来の目的は何だ?」
「本来の目的?」
「本来ここには伯爵かその一族の者しか入れない事になっている。侵入者の可能性があるから罠は仕掛けてあるだろうが、伯爵家の者が罠にかかってしまっては本末転倒だろう」
「そりゃあそうですね」
「途中転送措置や壁が有ったが、伯爵家の者なら迷うことなくここまでたどり着けたはずだ」
「俺と違って護符を持っている少佐はすんなりここにたどり着いたって事ですね」
「そうだ。その前提でこの道をどう見る」
「伯爵家の者なら真っ直ぐ進むかと」
「では我々の進む道も決まったな」
 エディ、前進しながら尋ねる。
「少佐」
「うん?」
「どうして、俺に確認させたんですか教育のためですか?」
「勉強になったか?」
「まあ、そうですけど。なんかこう子供扱いされてるような……」
「そう気にするな。さっきのは私だけでは判断できなかったからだ」
「判断できなかった?」
「私は護符を持った状態でしかいられない。つまり護符を持っていない者にあの道がどう見えるのかは判らないということだ。加えて私はプロのスイーパーだから、伯爵家の者のように見ることも出来ない。さっきの道だが、私には前方が光って見えたし脇道にも気づいた。どちらも罠に見えるので判断しかねていたのさ」
「俺だけだと前が光って見えなかったから、光る方向が伯爵家の人間へのメッセージって事ですね」
「そういう事だ」
「ははは、俺も役に立ってたんですね」
「納得したか?」
「ええ。ここに入ってから待ってるばかりで、少佐の後を追いかけるだけでしたからね。実のところ少佐の足手まといで時間を取らせてるだけなんじゃないかと」
「護符が一枚しかないのだからしょうがないさ。お前が護符を持って先に進んでいたら、私が今のお前と同じ事をしていただけだ」
「そう言って貰えると気が楽になりましたよ」
 少佐の足が止まる。
「どうしました?」
 少佐、唇に人差し指をあてる。正面の暗闇にかすかに光る眼。
 人間の身長ほどの犬が現れ通路を塞ぐ。
 二人、数歩後ずさりする。犬は動かない。
「襲ってくる気は無さそうだな」
「番犬ですかね」
「少し様子を見てみるか」
 少佐、時計を見る。
「10分ほどたったな」
「なにもおきないですね」
「これはおそらく独立系の防犯装置だな」
「独立系?」
「今までの防犯装置は一つのシステムで制御されていたと思えるが、これは別の制御系。独自の判断で動いている様に見える」
「というと?」
「我々を足止めしたいのなら壁を出せばいいし、護符を持っている者だけを選別したいのなら強制転送を使えばいい。」
「今までに出くわした仕掛けですね」
「うむ。同じシステムならわざわざこいつを出す必要は無いだろう」
「こいつの仕掛けはともかく、このまま待っててもらちがあきませんよ」
「そうだな。夫人の身が心配だ。とはいえ、どう対処するのが正しいのか……。考えられるのは、こいつ自身が正しい道を案内する係だと言うこと。もしくはこいつは誰かの指示を待っているか。あるいは自力でこいつを突破するか」
「突破ですか」
「伯爵一族がこいつと戦うというのは不自然だし。道案内ならソフィア様が聞いていそうなものだ。イレギュラー対策と考えるべきかもしれん」
「イレギュラー対策?」
「予想外の出来事が起きた場合の処理系という事だ。ここは本来伯爵一族以外は出入りしない前提で作られているはずだ。よしんば外部の人間を招き入れるとしても一族の人間が案内するだろう。ところが、今ここには一族の人間がいない。そこであいつが出てきて我々を足止めし、誰かの指示を待っている。そう言うことだ」
「誰かの指示って、こんなところに誰かくるんですか?」
「一族の人間が追いついて来るか、あるいはシステム管理者……」
 少佐、考え込むような表情になる。
「システム管理者?」
「この霊廟全体を仕切っているもの。そうか、これはまずいかもしれん。」
「どうしたんです?」
「アイリクだ」
「え? アイリクって、盗まれた人形の?」
「うむ。ここの管理者はおそらくアイリクだろう。」
「ええ? 人形が管理者ですか?」
「だからこそ代々引き継がれて来たんだ。あのドールハウスが敷地全体のモニター装置でアイリクがその監視者だとしたら」
「じゃあアイリクが我々を通してくれるのを待つしかないんですか?」
「いや。今アイリクはあのドールハウスにはいない。伯爵夫人の手によってこの霊廟の中に閉じこめられてしまったんだ。だからいくら待ってもアイリクの助けは期待できないだろう」
「ちょっと待ってください。アイリクがここの管理者で丁度ここにいるのなら何の問題も無いのでは?」
「金庫の鍵を持った本人が金庫に閉じこめられている。そういう状況だと思え」
「ええ!? そう言う事になっちゃうんです?」
「ソフィア様の言葉を思い出せ。アイリクは本来、自力でドールハウスに戻る力を持っているはずだ。それが一週間経っても戻って来ていない。この霊廟内ではアイリクの力が制限されている可能性が高い」
「そんな事があるんですか? いったいどんな目的で」
 少佐、考え込む。
「そうか」
 少佐、少し道を戻り目を閉じる。しばらくして、ポケットから何かを取り出し床に置きぶつぶつ呟く。炎の様なものがゆらめく。
「あのー。何やってるんです?」
「やはりな。ここには魔法障壁が張られている」
「え? 魔法?」
「魔法による透視や転送を防ぐための障壁だな。だからアイリクは自力でドールハウスに戻る事ができないんだろう」
「なるほど。って、それを確認したって事は……」
「人並みには使えるつもりだ」
「人並みって、俺魔法なんて使えませんけど?」
「必要があったから覚えただけだ。気にするな」
「はあ。そういうもんですか……」
「問題はあの番犬を動かす事ができそうなのはソフィア様しかいないって事だな」
「ええ?」
「伯爵はしばらく戻れないと言っていただろう。そして夫人とアイリクはこの奥。残るはソフィア様ただお一人」
「でもソフィア様は」
「ベルモント氏が許さないだろうな」
「じゃあどうすれば?」
「強行突破しかないだろう」
「強行突破」
 エディ、ゴクッと唾を飲む。
「幸い霊廟内部に閉じた魔法は使えるようだから。あいつを足止めしてその横を駆け抜ける。遅れるなよ。いつまで足止めできるか判らんからな」
「え? 倒すんじゃないんです?」
「あいつを倒したらもっと強い奴が出てきました。じゃ洒落にならんだろう。第一倒せる保証もない」
「なるほど」
 少佐、リュックから筒状の武器を取り出す。
「まず、これで粘着剤を撃ち込む。その後、魔法で粘着力を強化するから。お前はその間に向こう側に走り抜けろ」
「少佐、それは?」
「ガス式のグレネードランチャーだ」
「そんな物も持ち込んでたんですか」
「何があるか判らんと、言っておいただろう。これなら熱源で発射元を察知されにくいし、ガス弾やゴム弾で相手を殺傷せずに済むから上流階級の仕事に向いている」
「なるほど」
「お前も一つ用意しておくといいぞ」
「えーと、そうですね」
(アホみたいな返事をしてしまったが、生きて帰れたら買っても良いかもしれない)
「眼をつぶれ」
「え?」
「発光弾を使う。眼をやられるぞ」
 少佐、ボールを犬に向かって放る。犬の手前で割れ、風船が飛び出す。犬は怪しんで見ている。
 風船はゆらゆらと上昇し、天井付近で爆発する。辺りが強い光で包まれる。
 即座に少佐が四発の粘着弾を発射し、犬の脚を封じる。
「走れ!」
 エディ、一直線に犬の横を駆け抜ける。
 犬はエディには興味を示さず少佐を睨んで唸っているが脚は動かないようだ。
 少佐が呪文を唱えると、犬の脚に付いた粘着剤の色が変化する。
 間を置かずに少佐が犬の横を走り抜ける。犬が口で噛もうとするが届かない。
 犬の真横を通り過ぎ少佐の視界から犬の姿が見えなくなる瞬間、尻尾が背後から少佐を狙う。
「尻尾!」
 尻尾が当たるかと見えた寸前、回転して危うくかわす。
「走れ! 効果がいつ切れるか判らん」
 そう言うとスピードを緩めることなくエディの横を走り抜ける。慌てて少佐の後を追いかけるエディに犬の遠吠えが聞こえてくる。

 エディがぜいぜいとあえいでいる。少佐も肩で息をしている。
「お、おってきませんね。ふっふっ、も、もう大丈夫でしょうか?」
「わからん。急ぐにこしたことはあるまい。終着点が判らないんだからな」
「そ、そうですね。行きますか」
 二人、歩き出す。しばらく進むと曲がり角が見える。
 角を曲がるといきなり視界が開ける。巨大な空間が目の前に広がっている。
 よく見ると、中央に大きな白い柱が上から下まで伸びている。あれが折れたら天井の岩が落ちてくるのだろうか?
 周囲の壁を階段が螺旋状に下に続いている。ここが階段の最上段にあたり上には登れないようだ。
「うぉ! 深い!」
「やっとついたようだな」
「これを降りろって事ですよね」
 音もなく、先程の犬が少佐に飛びかかる。
「少佐!」
 少佐と犬がもつれ合って巨大な縦穴に落ちていく。


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Posted by Syousa Karas at 06:03│Comments(0)小説
 
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