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2009年09月08日

連続小説 4) 伯爵令嬢

今回はちょっと長いです(^^;

少佐アバター
ちょっと若いかなー
連続小説 4) 伯爵令嬢
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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』

4) 伯爵令嬢
 聖堂の奥で一人の少女が祈りを捧げているのが見える。傍らの老人が少女を見守っている。
 少佐とエディが近づいていくと老人が少女に声をかける。
 少女はゆっくりと立ち上がり振り向いた。
 ステンドグラスを抜けた色とりどりの淡い光の束が少女の周りを乱舞し亜麻色の髪を輝かせる。神の祝福を受けた少女というのは実在するのだ。
「あなたが少佐さん?」
 鈴を転がすような声で話しかける少女に、少佐は片膝を付き頭を下げる。
「お待たせして申し訳ありません。ソフィア様」
 事態が飲み込めない俺は立ったまま呟く。
「ソフィア様?」
「伯爵令嬢ソフィア・フォルテモード様だ。頭を下げんか」
 慌てて膝をつき頭を下げる。
「申し訳ございません。てっきり伯爵様がいらっしゃるものとばかり。まさかこんなお美しい姫君がおられるとは」
「馬鹿者! 余計なことを言うな」
「いいのよ。面白い方」
 ソフィアはくすくすと笑いながら二人に椅子を勧め自分も座る。
 少佐が立ったままなので、俺も立っていることにした。
「それでご依頼というのは?」
 少しの沈黙の後、ソフィアが語り出す。
「人形を探して欲しいのです。フォルテモード家に伝わる大事な人形、アイリクを」
(アイリクと言うのは初代伯爵の夫人の名前でもあるらしい。大変才能豊かな女性であったらしく伯爵家誕生に大きく寄与し、夫人が亡くなった後伯爵はその人形を作らせ代々の跡継ぎに相続させるよう指示したそうだ。この時の俺はそんな背景は露程も知らず話を聞いていたわけだが)
「その人形はいつ盗まれたのですか?」
「五日前です。私が外出先から戻ると消えていました」
「ソフィア様のお部屋から?」
 黙って頷くソフィアを見て少佐は首をかしげる。
「伯爵家ご令嬢のお部屋に賊が侵入し、人形を盗み出したというのですか? 伯爵家の警備がそれほど手薄だとは思えないのですが?」
 しばらくの沈黙。
「人形は多分屋敷内にあります。いえ間違いなく。そして私の部屋から人形を持ち出したのは……」
「屋敷の人間、ということですね」
 小さく頷くソフィアの肩が震えている。
「なるほど、それなら確かにありえるかもしれません。人形が屋敷から持ち出されていないという根拠はありますか?」
「あの人形は普通の人形ではないのです」
「普通の人形ではない?」
「はい、あの人形は対になるドールハウスの側から一定距離離れると自らの意志で戻って来るのです」
「自らの意志で?」
「ええ、ドールハウスは大きな物でとても一人や二人の人間で持ち運べるような物ではありませんし、運び去ろうとした形跡も見あたりませんでした」
「なるほど、それで人形はそのドールハウスからそう離れていない場所に隠してあるということですね」
「そうです」
「うーん、そうなると犯人の意図がわかりませんね。屋敷から持ち出せない人形を盗んでいったい何の意味があるのか?」
「人形の瞳にはアイリクの涙と呼ばれる宝石が埋め込まれています」
「では、その瞳だけを……言いにくいのですが」
「いいえ、瞳だけをくり抜いて持ち出すことは出来ません」
「と言いますと?」
「アイリクの涙こそ人形の魔力の源なのです。瞳に手をかけると呪いが発動し周囲の者は絶命してしまいます」
「つまり、屋敷の中で死んだ者はいないということですね」
「ええ、人形が消えた事に気づいて直ぐに屋敷の者全員に事実を告げました」
「ふむ、それは厄介なことになりましたね。犯人にしてみれば苦労して盗み出した人形が外に持ち出せないだけでなく、己の命を奪う危険な物だと知ってしまったわけですから。二度と人形に近づかない可能性もあります」
 ソフィア、黙り込みうつむいてしまう。
「どうしてそのままにしておかなかったのですか?」
「え?」
「呪いのことを告げなければ犯人が宝石に手を出し、結果死んでしまえば人形の有りかが判ったのではありませんか?」
 ソフィア、少佐を真っ直ぐ見つめ答える。
「そんなことは出来ません」
 少佐、ソフィアをじっと見つめた後にこっと笑う。
「判りましたソフィア様。人形は必ず見つけ出します」
「では、依頼を受けていただけるのですね」
 みるみる少女の顔が明るくなる。息苦しかった室内を春風が通り過ぎたような気がした。
「では、お屋敷の方には明朝お伺いします。よろしいですか?」
「はい」
「あと数点お伺いしたいのですが。人形の呪いについて事前に知っていた者はいますか?」
「ええ、伯爵家の者は当然知っていますし。古くから勤める者達も公にはともかく知っていたと思います。ねえ、ベルモント?」
 側に控えていた老人が意外にしっかりした声で答える。
「はい、お嬢様。申し上げにくいことではございますが、新しく入った者達や下働きの者など、ご家族のお側に近づくことを禁じられている者以外は存じ上げていたかと。お嬢様のお部屋の片付けをする者達に、間違っても人形に触れてはいけないと注意する必要がございましたので。申し訳ございません」
 深々と頭を下げる老人に少佐が問いかける。
「それならば犯人の目星はすぐに付いたのでありませんか? いくら大きなお屋敷とはいえ、最近入った者達がそれほど多いわけではないでしょうに」
「確かにその様な者達の数は少のうございます。けれどそういった者達はご家族のお部屋に近づくことを許されておりません。事件発覚後、すぐに屋敷の防犯カメラの映像を調べましたが、不振な行動をとっていたものはおりませんでした」
「ふーむ、人形が消えたのはソフィア様が外出された数時間の間ということで間違い有りませんか?」
 この問いにはソフィアが答える。
「ええ、部屋の出入りをするときにアイリクに声をかけるのが習慣になっていますから」
 それまで黙って会話を聞いていた俺は、人形に話しかける少女の姿が目に浮かび、つい声に出してしまう。
「人形に挨拶ですか?」
「おかしいでしょうか?」
「い、いいえそんなことはありません。失礼申し上げました」
「アイリクは他の人形とは違うのです。まるで意志を持って生きているような。いつも私を見守っているような、そんな人形なのです」
「そんな不思議な人形なら、自分の意志でどこかに行ってしまったのかもしれませんね」
 うっかり口を出た言葉に全員沈黙する(まずい事を言っちまったかな)
 どう取り繕うか考えていると、少佐が話題を変えてくれた(GJ少佐!)
「最後にお伺いしたいのですが」
「はい、なんでしょう?」
「今回の依頼、手配されたのはどなたですか?」
「それは私でございます。手違いがありましたそうで、申し訳ございません」
 深々と頭を下げるベルモント。
「いえ、別に責めているわけではありません。それで、その手配は信用のおける人物に依頼されたのでしょうか?」
「はい、それはもちろん。伯爵家では結構な数の依頼を毎月斡旋所に行います。主に市勢調査などですが。そのためそういうルートは確立しておりまして。今回のような個人事務所への依頼が斡旋所の方に回ってしまうなど考えられないのですが。誠に申し訳ございません」

 伯爵家に戻る車の群れを少佐とエディが見送っている。
 車列が見えなくなると、少佐が車の方に歩き始める。
「斡旋所に向かってくれ」
 エディがその後を追う。
「斡旋所? 何かあるんですか?」
「うむ。細かいことは走りながら話そう」


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Posted by Syousa Karas at 06:03│Comments(3)小説
この記事へのコメント
少佐の推理面白いね
この先の展開どうなるのかな^^
毎日見るのが習慣になっちゃったw
Posted by tim at 2009年09月09日 13:39
きゃはは〜〜
読み返してからコメントしたら昨日の分
にコメ書き込んじゃったw。
Posted by tim at 2009年09月09日 13:41
ギクギク!
区切りが難しいのよね・・・
長すぎると読む気無くすだろうし
短いと繋がりが判らなくなっちゃうし
Posted by Syousa KarasSyousa Karas at 2009年09月09日 18:11
 
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