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2009年09月07日

連続小説 3) 依頼主

小説の続きです。

エディのアバターです。
連続小説 3) 依頼主

髪がイメージに・・・
連続小説 3) 依頼主
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『トラブルスイーパー エディ・ガイオット 伯爵令嬢と消えた人形』

3) 依頼主
 広い室内に立派な家具が置いてある。奥の窓際にデスクがあり少佐が椅子に座って書類を見ている。
 案内を受けてやって来たエディが部屋の入り口で立ちつくし感嘆の声を上げる。
「ヒュー、立派なもんだ。いったい月いくら払ってるんだ? この辺じゃ相当取られるだろう?」
 少佐はその問いには答えず、エディに目の前の椅子を勧める。
「顧客がついているからな。直接仕事を受けることも多い」
 椅子に座り改めて室内を見渡すエディ。
「なるほど手数料無しで高額な依頼か、うらやましい話だぜ。だが、尚更おかしいな」
「うん?」
「そんなあんたが何でこの仕事にこだわるんだ? 俺の借金まで肩代わりして。大した仕事でも報酬でもないのに」
 少佐、訝しげな顔でエディを見つめる。
「お前、依頼書は読んだのか?」
「ああ見たぜ。無くした人形を探してくれってことだろ? お人形探して1万ドルは割がいいが」
「10万だ」
 何を言われたのか理解できずに一瞬きょとんとする。すぐに金額のことかと思い至ったが、まさかという思いが強く聞き返してしまう。
「え?」
「報酬は10万ドルだ」
 頭の中を札束が駆け回り、椅子から転げ落ちそうになる。
「そんなばかな……」
 口をあんぐりと開けたエディに少佐があきれ顔で答える。
「ばかはお前だ。数字も読めないのか? そんな事でよくギャンブルに手をだすな?」
「だって、たかが人形だろ? 10万ドルなんて出す奴がいるわけ」
「さっきお前に渡した金が1万ドルだったな。報酬が1万ドルだったら私の取り分はどこにいったんだ?」
「えーっと、それは確かに気前がいいとは……、本当に10万ドルなのか?」
「お前の取り分はさっきの1万ドルでいいってことだな」
 とっさに両手を上げて少佐の言葉を遮る。
「いえいえ、何をおっしゃいます。10万そう10万ドルね。……、なんで人形ぐらいでそんな金額を?」
「ふー、いいか。この仕事は本来ここに届くはずだったんだ。手違いで斡旋所に回ったと聞いて探しに行ったところ」
「俺が持ち出しちまってたと」
「そういうことだ」
「それならなんで俺を混ぜる気になったんだ? 少佐一人で受けるつもりだったんだろ?」
「わからん奴だな。手違いとはいえ一度は斡旋所に回った仕事を私が勝手に受けるわけにはいかんだろ。斡旋所から依頼書を持ち出したのはお前なんだから、建前としてはお前がこの依頼を受けたことになる」
(なるほど理屈は通っているようだ。しかしそれなら俺に任せておけば?)
「確かに10万ドルは大金だな。俺にとっては。だがあんたにとってはどうしても欲しいって金額でもないんじゃないのか?」
 食い下がるエディにあきれ顔で少佐が問いかける。
「しつこい奴だな。何が気に入らないんだ?」
「いや、別に気に入らないってわけじゃないんだが。こう、なんていうかしっくり来ないというか」
 少佐はじっとエディの顔を見つめると、ため息混じりに話し出す。
「いいか。何で私の所に顧客がつくと思う?」
「え? さあ?」
「信用だ。顧客は私に依頼すれば必ず解決してくれると思うから、高い金を払って依頼に来るんだ」
「なるほど」
 一概に斡旋所のスイーパーの腕が悪い訳では無いが、新米や他の仕事の片手間にスイーパーをやっている者もいる。信頼できるスイーパーの心当たりがあるなら名指しした方が確実と言うことだ。
「この依頼は私の所に届かなかったんだから、その時点で私は関係ないと言い張ることも出来る。しかしだ、この仕事を受けたスイーパーが失敗したらどうなる? 理屈では私の失敗ではないと判っていても、感情として二度と私の所に仕事の依頼にはこなくなるだろう。そういうことだ」
「ふーん。しかし、たかがお人形探しだろ? 俺が失敗するとでも?」
「この仕事の依頼主が誰だか判るか?」
「え? いや依頼書には書いてなかったよな?」
「ああ、書いてないな」
「そ、そうだろ。そこまでは見落としてなかったはずだ。えーと、10万も払うって事は多分どっかの大金持ちだよな」
 考え込むエディ。
「伯爵だ」
「うん?」
「これはフォルテモード伯爵家の依頼だ」

 古臭い車をエディが運転している。助手席に座っている少佐の肩には大人しくカラスがとまっている。
「しかし、まさかこの辺一帯のご領主様からの依頼とはねー。少佐、あんた普段からこんな大物を相手にしてるのかい?」
「伯爵家の依頼は初めてだ。それだけに失敗は許されん」
「なるほど、上顧客獲得のチャンスってわけだ」
「お前もそのつもりで働くんだぞ」
「へいへい、判ってますとも。俺に取っちゃ5万ドルは大きいからねー」
「残りは4万ドルだ」
「細かいこと言うなよ。4万でも大金さ」
 やがて約束の教会が見えてきた。建物の前に大きな車が数台止まっていて、警備の人間が辺りに散らばっている。
「あれかな?」
「そうだろうな、少し離れたところに止めろ。武器を置いて教会には歩いて向かうぞ」
「へいへい」
「間違ってもポケットに手を入れたりするな。相手に見える所に出しておくんだ」
「判ってますって」
 車を降り、横に並んでゆっくり教会に向かう。
(警備でこっちを見ているのは数人だけか。陽動に備えている訳だな。こりゃ少佐に任せておいた方がよさそうだ)
「そこで止まれ!」
 警備員の一人が二人に近づいてくる。
(ごついねー。こいつなら熊でも倒せそうだ。スイーパーに依頼する必要なんてあるのか?)
 入り口から数メートル離れたところで立ち止まり、近づいてきた警備員に少佐が話しかける。
「依頼を受けたスイーパーだ」
 少佐を一別した後、じろじろと俺を品定めしている。にっこりと笑って見せたが余計に睨み付けられてしまった。まったく、愛想のない奴だ。
「そっちは?」
「助手だ」
「助手がいるなんて聞いてないぞ」
「今度の仕事は急ぎだと聞いている。一人より二人の方が仕事が早いだろう」
「……」
 どうやら、少佐の顔は事前に知っていたらしくほとんど注意を払っていない。一方、俺の方は予定外だったせいかあからさまに怪しんでいる素振りだ。
「仕事のキャンセルならこのまま帰ってもいいが?」
「まて、いいだろう。そこに並べ。ボディチェックをする」
 少佐のチェックを始めると肩のカラスが「カァ」と鳴いた。ぎょっとする警備員。
「い、生きてるのか?」
 その問いに答えるようにカラスは飛び立ち、少佐の周りを一周すると再び肩に止まり警備員を睨め付けた。


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Posted by Syousa Karas at 06:03│Comments(2)小説
この記事へのコメント
うれしいな
毎日読めるのね^^v
SSは2枚目の方がカッコいいな。
前にミナちゃんは読んでいたんだ〜〜
その頃は知らなかったなぁ^^v
Posted by tim at 2009年09月07日 13:58
数日分は登録してあるので読んでねー(^^

以前配布した分は見てなかった?
DingerのSHOPにも無料で置いてたんだけどな?
ま、全部テクスチャだったから読みにくいことこの上なし!ってやつだったけど(^^;
Posted by Syousa KarasSyousa Karas at 2009年09月07日 19:54
 
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